ここがヘン!?フィリピンの学校教育


「カズエー、宿題でこれをネットで調べないといけないんだけど…」。
子どもたちが学校から帰ってくるころになると、そんな猫なで声で子どもたちがやって来ないかと、いつもギクッとする。 


フィリピンの学校は、やたらとキーワードをネットで調べて、そのプリントアウトを提出する宿題を出すのだ。そのためバハイ・トゥルヤンの子も、近くのコミュニティの子もインターネットカフェに行って調べるのだが、お小遣いを節約したい子どもたち、もしくはとっくに買い食いに使ってしまって、お金のない子たちが私のところへやってくる。


オフィスには一応WIFIが入っているけど、調子が悪いことがしょっちゅうで、そんなときは家に帰ってから、ネットカフェに行きリサーチしなければならない。タガログ語の宿題などは意味もわからず、ただやみくもにキーワード検索をするしかなく、子どもから「これじゃなーい」と逆ギレされることもある。(もちろん、そんなときは、こっちも黙っていないけど)


子どもの宿題なのだし、お小遣いもあげているのだから、それをやりくりして、子どもがやるべきだろうと、日本人の私は言ったのだが、フィリピン人の感覚としては、子どもの宿題を親が手伝うのは当たり前らしく、それができない親に代わって、スタッフが調べることはさしたる問題でないらしい。現にうちの大家さんの家でも、教師をしている母親が、息子の宿題を一日がかりで手伝っている。


そんな親バカな文化にも思うところがありつつ、もっと疑問に思うのはフィリピンの学校のやり方。こうやってネットで調べて、そのプリントアウトを持参しなさいという宿題は、フィリピンのどこの学校でも同じ。フィリピンの多くの家庭は、生活に余裕があるわけではなく、こうした日々の宿題にかかるお金は結構な負担なのだ。


もちろん、子どもの教育のためであれば、親が何とかお金をやりくりすべき場面もあると思う。でも、これは果たして、そこまでの意味がある出費なのだろうかと思う。
だって、ネットカフェに宿題をしにきた子どもを見ていると、みんなキーワードを検索して、コピペしているだけ。内容をよく読まずに数分で終わらせて、あとはフェイスブックやゲームをしている…。


ほかにもフィリピンの学校は、何かと余計なところでお金がかかる。子どもたちが楽しみにしているクリスマスパーティはレストランで開かれ、子ども一人で貧しい家庭の一日分の稼ぎが飛んでいく計算だ。


そのほか、「サイエンスコンテスト」、「マスマティックスコンテスト」など、〇〇コンテストなるものが頻繁に開かれ、これにも参加費用がかかる。勉強のためのイベントなら意味のあるものだろうと思っていたけど、聞いた話によると、この実態は科学とも数学とも関係のない美人コンテスト、イケメンコンテストらしい。学校によっては、女子生徒がビキニを着て出場するところもあるらしく、以前スタッフ会議で問題となった。


それほどあからさまな美人コンテストは見たことがないけど、毎年10月にどの学校でも開かれている「ユナイテッド・ネイションデー」というイベントを見たことがある。「世界平和を願う」という主旨のはずなのだけど、校長先生の話以外では、そういうメッセージ性のあまり感じられないイベントだった。生徒の代表が世界各国の民族衣装を着て集うのだが、その衣装は生徒が自前で用意する。マニラの大きなマーケットには、いろんな国のなんちゃって民族衣装が売っているのだけど、毎年同じ国の代表に選ばれるとも限らず、親にとっては、これを買うのだって痛い出費だ。

ミス・ブルネイに選ばれた女の子の父親は、商売道具のサイドカーも娘仕様にデコレーションしてしまう親バカぶり。でも、サイドカーの運転手の生活も楽ではない。


もっとも、こうしたイベントごとを派手に行うのは、今のフィリピン文化の現れでもあり、保護者も生徒もそういうものだと受け止めているようだ。けれど、庶民の生活レベルに対して、ともかくお金をかけすぎるところは、何とかならないものかと他国のことながら思う。

宿題を提出できないために成績が上がらず、勉強への意欲を失ったり、親に気がねしたりして学校をドロップアウトする子も少なくない。


さらに庶民の悩みの種がまたひとつ。これまでフィリピンの学制は、これまでエレメンタリースクール6年、ハイスクール4年が義務教育だったのだが、今年度からシニアハイスクール2年を加えた12年が義務教育になった。

高校卒業までに12年間かかるということは、日本と同じだ。世界的にみると、12年制の国がほとんどで、世界の基準にあわせるために、12年制に意向したと政府はいう。


だがこれ、「義務教育がただ2年間延長された」。というのが実態のようなのだ。カリキュラムも決まっておらず、ただでさえ、不足している教室も、さらにすし詰めの状態になっているという。「先生は勉強とは関係のない話をしているよ」と話している子どももいた。
日本のように絶対的な権限を持つ学習指導要領みたいなものが用意されているわけではないのだ。


果たしてどれだけ教育的効果があるかわからない2年間分、家庭の出費ばかりが増えることを考えると、ますます経済的な理由から学校をドロップアウトする子どもが増え、格差も広がっていくのではないかと懸念する。

One Response to “ここがヘン!?フィリピンの学校教育”

  • Joy:

    i think you need to research more. the private and public school has different level of education. we have also a low class and high class society in the Philippines.

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プロフィール

野口和恵

フリー編集者・ライター。児童書編集にたずさわるかたわら、国内外の子どもを取り巻く問題について取材。

著書に「日本とフィリピンを生きる子どもたちージャパニーズ・フィリピノ・チルドレン」(あけび書房)がある。


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