支援する意味って、ナンスカね?



「あんな人を支援する意味があるのか、わからなくなりました」


以前、フィリピンのNGOにインターンとしてやってきた学生からそんな主旨のメールを受け取ったことある。「あんな人」といわれたのは、その学生より6、7歳くらい年上で、人柄が悪いわけではないが、勤勉性に欠け、仕事も長続きせず、そんないい加減な自分を隠すために嘘をついてしまう青年だった。


さまざまな事情から、「その青年」は日本から手厚い支援を受けており、学生にも「その青年」のためにひと肌脱いでもらう予定だった。だが、いざ本人と会ってみると、気持ちが萎えたという。学生の言い分は私もわからないでもなく、彼らの関係はそこで終わりとなった。


でも、せっかくお金と時間を費やしてフィリピンまでやってきた若い子たちが、そうして帰っていたことは残念に思う。
なぜ、そういうことになったのだろう。


日本のテレビが途上国の支援現場を取材すると、兄弟の面倒をよくみて、頭が良くて、将来は医者になりたいと目をキラキラさせて語る子どもの姿が紹介される。それを見て「ああ、この子が学校に行ければ、きっと将来は立派な医者になるだろう。そのためなら協力したい」と考える方も少なくないだろう。


現にそういう方々の浄財によって活動は支えられている。学生も胸を熱くしてフィリピンに来たのかもしれない。


けれど、現場(フィリピンに限らないと思う)に来ると、先進国の人間が思い描いていたような感動ストーリーには、そうそう出会えない。それどころか、支援者の善意が裏切られるようなこともしばしば起こる。


スタッフと同じように信頼し、仕事を任せていた子が、お金をくすねて行方をくらました。小さいときから、施設のなかで育ててきた子が恋人をつくって逃げた。学費を工面して二回も大学に進ませた子が、二回ともあっさりと中退して、未婚の母になった。支援してきたストリートチルドレンに脅され、ソーシャルワーカーがお金を巻き上げられた…。私が知る限りでも、そんなことが起きていた。


スタディツアーなどに参加して、短時間だけ現地の人と交流すると、子どもから大人までみんな笑顔で「ウェルカム」という。そんなオモテの明るさに、つい忘れてしまいそうになるが、彼らが生まれた環境は過酷だ。親のネグレクト、虐待。犯罪が多発するコミュニティ。がんばって働いても貧困から抜け出せない社会。


そんな環境に生まれても、夢を持ち続け、コツコツと努力をし、成功をおさめる人もなかにはいるだろう。けれども、それはよほど強靭な精神力と強運の持ち主だ。人から傷つけられれば、人を信用することができなくなる。まともな働き口がなければ、人生の目標など持てず、日々を生き抜くことに必死になる。それが自然なことだと思う。


バハイ・トゥルヤンのなかでも、一筋縄ではいかない子どもや青年たちは、日常的にもさまざまな問題行動を起こしていた。心が折られそうになるスタッフもいた。けれども、子どもに一方的に「出ていけ」という者はいなかった。そう言ってしまえば、彼らの人生は以前と何ら変わることがないと、みんな知っていたからだ。ときに厳しく接しながらも、チャンスを与え続けていた。


フィリピンでは、何かと過ちを犯した人に対して、「セカンド・チャンス」を与えることを好む文化がある。それにしても、チャンスの数が山積みになっている子もいた。18歳のエビリンもその一人だった。だが先日、そのエビリンが飛び級試験に合格し、中1から大学に進学できることになったと知らせが入った。


この先、彼女が無事に大学に通いとおせるかは未知数だ。もしかしたら、また周りをがっかりさせるようなことがあるかもしれない。
けれども、5歳も下の子どもたちにまじって、小学校の勉強からやりなおしていた彼女が、こうして大学に進学できたのは、スタッフの根気強い支えがあったおかげだ。


「支援する意味」なんて、そもそも最初はわからないものじゃないかと思う。
だれだって、自分の先の人生だってわからない。
この人を支援すればこんな成果がついてくる、なんて保障はどこにもないのだ。

誰を支援するかではなくて、どう支援していくか。
それを常に自分に問いかけながら、生きづらさに寄り添っていれば、たまには、ご褒美がある。
エビリンが、うれしい知らせをくれたみたいに。


ということで、最後に子どもとのかかわりを考えるチャリティイベントのお知らせ。

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★初夏のチャリティ・ラテンパーティ  子どもとのかかわりを考える☆ 

貧困や暴力が子どもたちにどんな影響を及ぼすのか。ストリートチルドレン
を取り巻く状況を学びながら、メキシコのNGOで活動してきた メンバーを囲んで、私
たちにできることを考えます。

そのあと、音楽を聞きながら美味しいラテン料理を食べながら交流しましょう。

 日時  6月8日(土) 18:30~22:00

 場所  東京/池袋・がんばれ!子供村 2階
      *JR・西武線 池袋駅より徒歩10分
      http://www.kodomomura.com/access.html

 参加費  1000円(飲食代+海外NGOへの寄付)

 内容  ・NGO「プロ・ニーニョス・デ・ラ・カジェ」で5年間働いたメンバー
      による子どもの心を考えるワークショプ

     ・手作りラテンアメリカ料理&スペイン料理と、音楽を楽しむ!(ワイン
      やソフトドリンク等のドリンクも用意しています)

     ・篠田有史のスライドショー「フィリピン・墓地で暮らす子どもたち」

 予約& 「ストリートチルドレンを考える会」へメールで。
問い合わせ   e-mail: info@children-fn.com 
      *当日参加も歓迎しますが、料理等の準備のために、できるだけ
      人数を把握したいので、予約メールをいただけると助かります。

☆ストリートチルドレンを考える会  URL : http://www.children-fn.com/

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プロフィール

野口和恵

フリー編集者・ライター。児童書編集にたずさわるかたわら、国内外の子どもを取り巻く問題について取材。

著書に「日本とフィリピンを生きる子どもたちージャパニーズ・フィリピノ・チルドレン」(あけび書房)がある。


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