Nスペ「女性たちの貧困」と
スモーキーマウンテンの「貧しく豊かな人」


2009年の厚生労働省の発表によると、日本の子どもの相対的貧困率は15.7%。
7~6人に1人の子どもが貧困状態といわれている。


中塚久美子著「貧困のなかでおとなになる」によると、2008年の厚生労働省の調べで、保険証がない無保険の子どもたちは、3万2000人以上にのぼったという。病気になっても、経済的理由から、医療にかかれない子どもが相当数いると考えられる。


また、生活保護世帯の子どもの進路を見ていくと、高校進学率はほかの世帯の子どもの高校進学率より10%低い。公立高校では、学費の減免申請をすることもできるが、減免申請者が多い学校ほど、中退率が高いという傾向があらわれている。経済的な困難から高校生活をあきらめる子が多く、それが貧困の再生産につながっている。


しかし、こうした数値を聞いてもまだ、日本で子どもの貧困が広がっているという実感は持てないかもしれない。大人の路上生活者はすでに都市部の日常的な光景になってしまったかもしれないが、ストリートチルドレンのように路上に寝泊まりする小さな子どもに会うことは、めったにない。


私がフィリピンのNGOの話をすると、「なんだかんだいっても、フィリピンにくらべれば、日本のほうがずっと恵まれていますよね」という反応が返ってくることがある。


だけれど、日本の貧困について見ていくと、フィリピンとはちがった、「実感がない」からこその肌寒さをおぼえる。


先日、NHKスペシャル「女性たちの貧困~“新たな連鎖”の衝撃~」では、ネットカフェに長期滞在する女性たちの姿が報道された。


そのなかには2年半にわたって、ネットカフェで生活している母と二人の娘がいた。シングルマザーの母は准看護士として働いていたが体調をくずして、家賃を払えなくなり、ネットカフェにたどりついた。  


3人はひとりずつ別々のブースを借りている。19歳の長女はコンビニでアルバイト、次女は中学生だが、半年以上学校に行っていない。食事は、1日1食、長女が買ってくるパンのみ。1日の大半を、パソコンをながめて過ごす。


母親が元気だったころに長女が書いたという作文には、母がいっしょうけんめい働いていること、そんな母を尊敬していること、将来母を楽にさせてあげたいという思いがつづられていた。


見ていて、「これほどまでに追いつめられているのに、なぜ生活保護を申請しないのか?」という疑問が浮かんだが、番組では特にそれに触れていなかった。だが、この母子に限らず、最低基準を下回る生活をしていても、生活保護を受けていない世帯が多いと聞く。日弁連の資料によれば、生活保護対象者のなかで、実際に制度を利用している人は、2割にすぎないという。


自己責任論、生活保護バッシング、目に見えない空気の流れが、彼女たちをネットカフェに閉じ込めてしまったのだろうか。


わずかな生活の糧を得るために、コンビニのアルバイトに行く長女。だが、彼女から弁当を買う人たちは、目の前にいる少女の事情など気づくこともないだろう。


フィリピンのテレビ局GMAの番組「I witness」で放送されたドキュメンタリーで、「pobreng mayaman(貧しく豊かな人)」という作品がある。舞台は、スモーキーマウンテンがあるマニラ最大のスラム。登場するのはフィリピンの最貧層の人たちだ。だが、中心人物エリーの周辺には、日本のネットカフェとは、まったく対照的な密度の濃い人間関係が展開されている。


「貧困」とは何だろう、「豊かさ」とは何だろう。


5月10日(土) 18時~ 池袋・がんばれ!子供村にて、この映像作品「pobreng mayaman(貧しく豊かな人)」の上映会を開催します。 お時間のある方はぜひお越しください。ぜひ多くの人と、意見を交わしたいと思っています。


詳細は以下の通り。

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フィリピンTVドキュメンタリーを通して考える「豊かさ」


フィリピンのテレビで放送されたドキュメンタリー「貧しく豊かな人(貧困地区の暮らし)」をみることを通して、現地で長期ボランティアをしたメンバーや現地スタディツアーに参加した若者と共に、貧困問題と「豊かさ」について、考えます。


日時  5月10日(土) 18時~  
 ・ドキュメンタリー上映(タガログ語・ 簡単な通訳有り)と解説
 ・現地滞在経験者を交えた座談会
   
その後、20時~ ワンコイン(500円)ディナー *手作り料理&市販総菜&ドリンク


場所  池袋・がんばれ!子供村 2階  ★池袋駅より徒歩10分


参加費 会員100円  非会員200円 *高校生以下は無料 ★ワンコインディナーは別


申込&問い合わせ E-mail: info@children-fn.com  Fax: 03-3818-0796


※ディナーに参加される方はできるだけ事前にご連絡ください。

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プロフィール

野口和恵

フリー編集者・ライター。児童書編集にたずさわるかたわら、国内外の子どもを取り巻く問題について取材。

著書に「日本とフィリピンを生きる子どもたちージャパニーズ・フィリピノ・チルドレン」(あけび書房)がある。


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