あるフェイスブック投稿が伝えたマニラの児童福祉


バハイ・トゥルヤン関連記事の翻訳です(自己流意訳ご容赦ください)。ひどい制度の犠牲になっている子どもと、活動の中心にいる友人たちが心配でなりません。

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写真の少年は生きている。しかし、だれも彼の年齢、住所、家族、本当の名前を知らない。最初に彼を見つけた警官がフレデリコと呼んだことから、そのようによばれている。


フレデリコは、マニラ社会福祉省によって運営されている施設、レセプション・アンド・アクションセンター(RAC)のスタッフによって、とらえられ、路上から連れてこられた。


この写真は、路上で撮られたものではない。彼がRACに来て、7か月経過した、10月12日に撮られたものだ。この写真は、フェイスブックに公開されている。


この写真を撮影、投稿したのは、NGOバハイ・トゥルヤン。オンライン上に写真をアップしたほか、画像データを、アキノ大統領、元大統領・現マニラ市長エストラーダ、司法省、社会福祉開発省、人権委員会に送った。


「いまだ彼らからの返事はありません」、とバハイ・トゥルヤンのキャサリン・シェリーは言う。「私たちは、6年前からRACの改善をもとめて政策提言してきました。けれども、何もかわっていません」。


バハイ・トゥルヤンは、フェイスブック上で次のように述べている。
「RACの中の状況は、ひどく悪い状況だ。子どもたちは、何のケアもなくただ監禁されており、犯罪よりも恐ろしい行為にさらされている。彼らはもっとも基本的な権利が保障されていない。適切な食事と衛生的な水、寝具、衣服。さらに子どもたちは、家族と連絡を取ることもできない。そればかりか、自分の子どもがRACの中にいることを家族が知らないという場合もよくある」


(※ RACは夜間、路上で歩いている子どもを無差別に車に乗せ、施設に連れていく。そのため、子どもだけで路上暮らしをしている場合に限らず、家族がいる子どもも、とつぜん、力まかせにRACに連れていかれる場合がある。この際にスタッフから暴力をふるわれたり、金銭をとられたりする子どももいる。くわしくは、バハイ・トゥルヤンが2009年にまとめたリポートにも明記されている。http://child-to-child.com/date/2012/10


多くの場合、子どもたちは、なぜ自分がRACにいるのかを知ることさえかなわない。表向きの理由として、スタッフは次のようなことを理由にあげる。
夜間外出禁止令(※ 治安維持の目的から自治体単位で決められている)を破って歩いていたから。非行行為への罰則。身体的に危険な状態にあると判断したから、などだ。
しかし、軽犯罪を犯した子どもと、適切なケアが必要だからという理由で連れてこられた子が同じ場所に入れられている現実がある。


バハイ・トゥルヤンは、マニラ市に、RACの早急な生活改善、もしくはフィリピン社会福祉開発省の基準を満たすまでの間、施設を閉鎖するように要求している。ネット署名サイトchange.orgを利用して、請願書の署名活動をはじめ、10月28日までに1000人の署名が集まっている。


「もし、RACのような施設について、苦情が出ているのであれば、食事の改善、適切な運営につとめ、暴力的な職員は解雇、もしくは訓練を受けるようにしなければならない」。社会福祉省、ソリマン長官は10月29日水曜日の路上生活者に関する会議でコメントしたうえで、「マニラ首都開発庁も、センターの改善に協力することができる。もし、RACがいっぱいであれば、ここ(※マニラ首都開発庁の一時宿泊施設のことか?)にいることができる」とつけ加えた。


RAC側は、この施設はドメスティックバイオレンスの被害者や不運にして路上生活をしている人のための一時保護施設としてつくられたものだと述べている。RACが最初に介入したのち、子どもたちは、よりよい生活ができる別の施設へ移している。受け入れ先としては、政府の住宅や、社会福祉開発省、NGOの施設があると説明している。


RACは、30年間運営されている。実行責任者のグロリア・アントニオによると、RACは三つのセクションに分かれている。18歳未満の青少年、大人の路上生活者、ストリートチルドレンと特別なケアを必要とする子ども。RACの中には、非行少年を受け入れる、マニラ・ユース・レセプションセンターがある。


「私たちの許容人数は50人です。しかし、ときには利用者が250人に達するときもあります。子どもたちを受け入れてくれる施設がほとんどいっぱいで見つからないために、超過滞在をしている子がいます」とアントニオはいう。ふつうは3日から5日だけの滞在だが、数か月滞在する子どももいる。


「危険な状況にいる子どもたちにノーといいません。私たちは政府の施設ですから」と彼女はつけくわえる。「現在、特別な支援が必要な子が6人います。彼らに必要な場所を見つけてやることができません」。金曜日、RACは一人の子を精神科の療養施設に連れていく。


RACには20人の寮母、6人のソーシャルワーカー、3人の料理人、10人の警備員がいる。全部で60人のスタッフがいて、看護師、医師、歯医者、栄養士と、子どもたちを路上からセンターにつれてくるレスキューチームがいる。


「現実的には私たちには、39人の寮母が必要です。本当にスタッフが不足しています。そのなかでできることをやっています」とアントニオは述べたうえで、多くの学生とNGOがRACにボランティアとして協力したり寄付をしたりしてくれるとつけ加えた。


バハイ・トゥルヤンは2月にエストラーダ市長に送った書簡の中で、RAC内で起きている次のことを改善するよう、要求している。


・RACスタッフによる非人道的な行為、拷問、いじめ
・子どもどうしのいじめ、暴力の容認
・家族との連絡ができないこと
・非行少年とほかの子どもを同じ部屋のなかで生活させること。
・定員超過状態、適切なサービス、支援の欠如


マニラ社会福祉省は3月、改善を約束すると返事をした。しかし、状況は何も変わっていない。


10月28日、バハイ・トゥルヤンは、RACに収容された経験のある子どもからのヒアリングを行った。これは、アジア人権委員会、チャイルドホープ、ヴァーラニー財団、カンルンガン、アサンプション大学の協力によって行われた。


その話からは、飢餓、身体的虐待、性的虐待など、恥辱と苦痛に満ちた体験があきらかになった。10代の子どもたちは暴力をふるうスタッフがいることを訴えた。実際に、RACでは、2008年と2010年に2件のレイプが起きている。


食事は、米とスープのみ。ときどき、調理されていない米や、傷んだものが出されたという。床で眠り、手で食事をし、バケツで用を足したこと、そして、いつも汚れた衣服を着ていることを訴えた。「水浴びをするとき、私たちはみんな同じせっけんと、一本の歯ブラシをつかっていました。私たちは一人20秒で水浴びを終えるようにいわれ、スタッフが数を数えていました」。


こうした訴えについて、アントニオとマニラ社会福祉省のジーン・ジャクイーンは否定している。子どもたちはマットを与えられたが、好んで床で寝ていた。日用品を与えても、使わなかった。衣服を与えても、古いものを着ていた、とアントニオは話す。


アントニオは子どもではなく、スタッフの側の過酷さを強調する。
「食料品も、寮母も、設備も制約があるなかで、私たちは最善をつくしています。ここには、あらゆる問題をかかえた子どもたちが来ます。コミュニティの厄介者、病院に行かなければならないような病気を患っていたり死にかけていたりするもの。精神の問題をかかえた子、家族から捨てられた子。ドラッグ中毒、軽犯罪に手を染めた子」。
 


アントニオは、寮母たちの研修の機会が不足していることについては認めている。「全員が研修を受けているわけではなく、現場に入って仕事を覚えています」。子どもたちの間で起きるケンカについては、ふつうの家族のなかで起こりうる程度のものだと話す。「年上の子どもが年下の子とけんかをすることがあります。私たちはこれをゆるしていません」。


アントニオによれば、RACの予算は、1年間に400万ペソだという。RACは、米に加えて、魚、肉、野菜を提供しているという。「食べ物は不足していませんよ。洗濯機や扇風機など、電化製品が古くなっているのは確かですが」。2015年には、RACを改装すると、アントニオはいう。


(※ フレデリコは写真が撮られた一週間後、バハイ・トゥルヤンに引き取られ、医療にかかることができた。検査の結果、多数の傷、栄養失調から、深刻な状況に陥っていたことがわかっている。)


バハイ・トゥルヤンは「私たちの介入によって、この写真の子どもは今、病気の子どものための施設で、十分なケアを受けることができています。彼が少しでも早く回復することを願っています」。と述べている。


この議論は、今始まったことではない。RACのやり方は、何年も前から批判を浴びてきた。しかし少しもかわらなかったと、市民活動家は語る。フレデリコは、RAC、ひどい貧困のサイクル、ネグレクト、虐待について、公の場であらためて考える機会を与えてくれた。


しかし、フレデリコのフェイスブックの写真は、誤解を招くものだとアントニオは批判する。フレデリコの状況は、実際は上向きだった。バハイ・トゥルヤンがRACで写真を撮った日はいつなのか曖昧だという。


「バハイ・トゥルヤンの気遣いには感謝しています。でも、この写真のフレデリコは、あんまりです。フェイスブックへの投稿はあまりに不当です」。


バハイ・トゥルヤンのスタッフとボランティアのなかには、外国人もいる。そのうちの多くがオーストラリア人だ。アントニオはその点を取り上げ、次のようにいう。「彼らは、政府に対して命令しすぎだ。まるで、自分たちが政府の首をにぎっているかのようだ。彼らは私たちの国の中にいるのに、まるで彼らが最善の方法を知っているかのようだ。正しいやり方というものがある。もし本当に助けたいと思うのであれば、もっと前からやるべきだろう」。


現在、フレデリコの写真は、1325回シェアされ、200を超えるコメントが寄せられている。人々は、子どもたちが、路上生活の末に、本当に安全な暮らしが保障されるようことを求めている。

【翻訳元】
RAPPER
http://www.rappler.com/move-ph/73464-rac-manila-frederico

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プロフィール

野口和恵

フリー編集者・ライター。児童書編集にたずさわるかたわら、国内外の子どもを取り巻く問題について取材。

著書に「日本とフィリピンを生きる子どもたちージャパニーズ・フィリピノ・チルドレン」(あけび書房)がある。


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