イベント紹介 私たちは『買われた』展


あくまで自分のできる範囲でだが、これまでストリートチルドレンや居場所のない日本の子どもの支援の現場に通ってきた。右も左もわからなかった学生時代から見れば、年を重ねるにつれて、多少なりともできることは増えてきた。逆境のなかでも、必死に生きて成長していく子どもの姿に立ち会うと、活動の意義を確認することができる。けれども、ぐるりと回って外を向くと、依然としててっぺんの見えない壁があるのを感じる。


社会からはじき出された子どもたちに対して、外からはこんな声を聞く。
「何をしでかすかわからない子たちでしょう」「周りのせいにばかりするけど、自分たちが悪い、自業自得」。
こうした発言をするのは、とくに冷酷な人間ではなく、むしろ普通の人が多いと思う。ただ、子どもたちと出会うことがなかったために、表層的な部分を見て自分の物差しではかるのだと思う。伝えること、知らせることの重要性を支援者の立場からも痛感する。


子どもに限らず、野宿者など何かしらの困難を抱えた人の支援にかかわってきた人は、だれしも同じような思いを抱くことがあるだろう。支援する相手への思いが深ければ深いほど、世間の認識とのズレは苦しいものになる。


居場所のない少女たちの支援をし、ともに活動しているColaboの仁藤夢乃さんは、自らも渋谷をさまよう女子高生だった経験から、高校や大学でJKビジネスの被害にあう少女たちについて知ってもらおうと授業をしてきた。家族が崩壊し、頼れる人もなく、居場所もなく、お腹をすかせて街を歩く少女たち。それが仁藤さんが会ってきた少女たちだ。少女たちは優しい声をかけてくれた男性がすすめるアルバイトをはじめ、気づいたときには商売の道具にされている。


ある大学の授業で、仁藤さんが「売春をする中高生についてどう思うか?」とたずねたとき、次のような答えが返ってきたという。「その場限りの考え」「遊ぶお金がほしいから」「自分も街で買春をもちかけられたことがあるけど、断った。だから、やる人はやりたくてやっているんだと思う」「そんな友達はいなかったから、わからない」「正直、そんな人と関わりたくない」「どうしてそこまでやれるのか、理解できない」。
そのとき、スピーカーの一人としてその場に来ていた当事者の少女は、「そんなもんだよ、世の中の理解なんて。もう、そんなことでは傷つけなくなった」と仁藤さんに言ったあと、自分の体験を語りはじめたという。すると、多くの学生が自分の持つ極端なイメージや偏見に気づいてくれた。


この経験から、仁藤さんとColaboに集まる少女たちのグループ「Tsubomi」は、少女たちによる企画展を計画した。それが「私たちは『買われた』展」だ。
目的は中高生世代を中心とする当事者たちが声を上げることで、児童買春の現実を伝えること。これまで表に出ることができなかった少女たちの声を伝えることで世の中の持つ「売春」のイメージを変えること、すべての女性に勇気を与えることだ。企画展の名前も少女たちが考えた。それぞれの現実や日常を表す写真、「大人に伝えたいこと」をテーマにしたメッセージ、参加メンバーのアート作品や日記などが公開される予定だ。
 前例のない勇気のある取り組みについて、少女たちは強い決意を口にしている。


「行くところがないとき、声をかけてくるのは男の人だけ。体目的の男の人しか自分に関心をもたなかったし、頼れるのはその人たちだけだった。他にご飯を食べさせてくれる人も、泊めてくれる人もいなかった。同じ想いをする子を減らしたい」(17歳)


「“普通はしないことだから、する奴は異常”みたいなイメージがあって、違うのになって思う。それぞれに理由があって、単にさみしいとか、遊ぶ金がほしいとか、
そういう簡単な理由じゃないことを知ってもらいたい」(16歳)


「親も頼れる大人もいない、ひとりで生きていくしかないと思ってた。最近一人暮らしを始めるまで、家っていう感覚がなかった。今でも、そういう小中学生はたくさんいると思うし、そういう子たちが体を差し出す代わりにおにぎりをもらったりしていることを、Colaboに来る年下の子たちをみて思う。だから私もこの企画に参加して、伝えたい」(20歳)


そのほかの少女たちのメッセージは、下記のイベントページから見ることができる。

https://www.facebook.com/events/569716099875649/permalink/628237390690186/


「私たちは『買われた』」展は、2016年8月11日~21日 神楽坂セッションハウス2Fで開催される。この現実をたくさんの人に知ってほしいと思う。展示品を通して、赤裸々な少女たちの声を聞いてほしいと思う、必死に生きている姿を見てほしいと思う。

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プロフィール

野口和恵

フリー編集者・ライター。児童書編集にたずさわるかたわら、国内外の子どもを取り巻く問題について取材。

著書に「日本とフィリピンを生きる子どもたちージャパニーズ・フィリピノ・チルドレン」(あけび書房)がある。


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