金子みすゞとJULA出版局と私

写真提供・金子みすゞ著作保存会


高校生のときに、ある読書感想文コンクールに応募したことがある。入賞を逃して悔しさ半分で、優秀作品が掲載された文集を開いたのだが、そのうちのひとつに強く心を動かされた。それは、金子みすゞの詩について書かれた感想文だった。


「つもった雪」


上の雪
さむかろな。
つめたい月がさしていて。


下の雪
重かろな。
何百人ものせていて。


中の雪
さみしかろな。
空も地面(じべた)もみえないで。


金子みすゞ童謡集『わたしと小鳥とすずと』(JULA出版局)より


この詩を取り上げた子は、「つもった雪」を子どもの集団としてとらえ、次のように、感想をつづっていた。
上の雪は、いわゆる優等生。成績がよかったり、リーダー的な存在であったりする子ども。教師からの過度な期待をかけられたり、他の子どもからねたまれたり、孤独な悩みをもつ子も多い。
下の雪は、勉強も運動も苦手な、いわゆる落ちこぼれ層の子。自分は何をやってもダメという無力感を抱きやすい。


そして中の雪は、特別に成績がよいわけでもなく、落ちこぼれでもない普通の子。過度なプレッシャーにさらされることもなく、学校生活のなかでつまずくこともない。けれど、その分、大人たちから目をかけてもらえることは少ない。上の雪や、下の雪の苦しみについて想像するのは、さほど難しくないかもしれないけれど、中の雪にまで思いを寄せることはなかなかできない。それをこれだけ短い言葉で表してしまうのが、金子みすゞなのだ。

 
このときに初めて金子みすゞの詩にふれた私は、それから夢中になって、全ての作品を読んだ。みすゞの故郷の仙崎にも訪ねていくほど、熱狂的なみすゞファンとなった。今では国語の教科書にも作品が掲載され、「みんな ちがって みんないい」というフレーズが、とりわけ有名になった。けれど、ほかのどの作品も、やさしさと新鮮な驚きに満ちている。
 若くして不幸な最後を遂げ、世間から忘れられていたこの童謡詩人の作品に光を当て、この世に送り出したのが、ほかでもないJULA出版局の大村祐子さんだった。その数年後、ずっと知りたかったストリートチルドレンについて書かれている本を見つけ、それがJULA出版局から出版されたものであること、「ストリートチルドレンを考える会」の窓口となってくださっていることを知ったときは、驚いた。


けれど、ジャンルのちがいはあれども、小さなもの、声を聞き取られることのないものの立場に身を置いたみすゞの詩と、あらゆる権利を否定されてきたストリートチルドレンのルポは、根底で一貫した太い水脈につながっていたのだと思う。
その思いをあらためて感じたのは、JULA出版局の皆さんと、昨年、安保法案への抗議活動でご一緒させていただいたときだった。連日の抗議活動に、私たちが行かれないときも、JULAのみなさんは足しげく通っていらした。


「ストリートチルドレンを考える会」では、去る4/9日にJULA出版局社長の大村祐子さんをお招きし、JULA出版局の本づくりにかける思いを話していただいた。
絵本は戦争のない世の中をつくるために生まれたこと、子どもが幸せに生きるためのものだ、という大村祐子さんのお話をお聞きし、JULA出版局の仕事が平和への願いそのものであることを感じた。


私自身も出版社の下請けとして、児童書の制作にかかわってきているが、利益を見込めるものや、教師や親の好みを優先した本が多くなっているのが現状である。子どもが経済活動の一部として見られている感も否めない。
そのなかで、信念をもって、本作りをすすめてきたJULA出版局の仕事には、会のメンバーとしても、ライターとしても、もっともっと学ぶところがあると感じている。
JULA出版局の皆さん、ぜひ、これからも末永いおつきあいをお願いいたします。

「ストリートチルドレンを考える会通信 Vuela! No.256」より転載

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プロフィール

野口和恵

フリー編集者・ライター。児童書編集にたずさわるかたわら、国内外の子どもを取り巻く問題について取材。

著書に「日本とフィリピンを生きる子どもたちージャパニーズ・フィリピノ・チルドレン」(あけび書房)がある。


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