「子ども中心」の社会的養護とは?-①
「ルポ 児童相談所」を読んで


2015年に日本国内で把握された虐待件数は10万件以上。年間5万6000件あまりだった2010年から5年間で2倍近くも増えたことになります。


厚労省は「虐待そのものが増えていることに加え、社会的意識の高まりで、警察からを含めた通告や相談が増えた結果」と分析しています。後者のとおり、これまで見過ごされていた虐待がキャッチされるようになったのであれば、一歩前進といえるかもしれません。


けれども、この10万人の子たちが、その後どのように過ごしているかは、あまり顧みられることはないのではないでしょうか。


児童相談所は通報を受けたあと、子どもや保護者に会い、重篤なケースは児童相談所内の一時保護所で保護されます。そこで、一定の期間をへて、家庭の状況に改善がみられる場合は家庭に帰りますが、家庭で適切な養育を受けるのが難しいと判断された場合は、児童養護施設や里親のもとへ移ることになります。


虐待を受けるなど、危険な状態にあった子が児童相談所に保護されたと聞くと、周囲はほっとするかもしれません。私にも心あたりがあります。けれども、当の子どもたちはどう思っているのでしょうか。


「ルポ 児童相談所―一時保護所から考える子ども支援」(ちくま書房)
は、社会企業家の慎泰俊さんが10か所の一時保護所を訪問、2か所の一時保護所に住み込み、子ども、親、職員100人以上にインタビューをとったルポです。


それによると一時保護所に入って「安心できた」という子どももいる一方で、「あそこは地獄」と語った子もいるといいます。


一時保護所にいる間は、学校へ通うことも自由な外出もできず、外とのかかわりが一切持てなくなります。これは、虐待の加害者だった親が子どもを取り戻しにくるのを防ぐためです。けれども、子どもたちは親しい友人にも何もいうことができないまま一時保護所へ連れてこられ、この先、自分はどうなるのか、いつまで一時保護所にいなければいけないのかもわからない、精神的苦痛を抱えているのです。さらに、子どもの数が多い保護所では、職員が細やかな対応や意思の疎通が難しく、それがますます子どもの不信感を募らせることになっています。


こうしたことを書くと、「児童相談所は何をしているのか?」という批判が出ると思います。けれども著者は、「いちばんの問題は、地域コミュニティの力が弱り、子どもを支えることができなくなった結果、児童相談所が子どもに関する問題をすべて抱えなければならない状態になっていること」と指摘しています。


本書に出てくる児童相談所の所長の言葉は重く受け止めなければと思います。
「虐待に関して、多くの人が正義感に燃えて勇ましいことを言うが、自分の現在の仕事や地域に問題が発生すると、後ずさりして『児相にお任せ』ということが多い。結果として、現場の仕事は日に日に増えていき、職員が疲弊しており、それが子どもの虐待死を防げなかったり、そこまでいかないとしても、子ども支援が十分にできないことにつながっている」


著者は解決策として一時保護の必要な子どもを、一時保護所のかわりに地域の里親家庭や児童養護施設などで預かる一時保護委託の拡大をあげています。
また、学校や民間団体、地域のボランティアなどが協力して、子どもや地域から孤立しがちな保護者を見守るネットワークづくりも提案しています。こうした取り組みは大阪や平塚などで、すでに実践されているそうです。


それぞれが自分たちの生活を送りながら、地域の子どもを見守りつづけるのは、誰にでも容易にできることではありません。けれども子どもの問題を行政任せにするのではなく、自分たちも担い手になり得るのだという意識を持つことがまず大切ではないかと、私は思いました。


このテーマに関連して、来月下記のようなイベントを予定しています。
お時間のある方はぜひ!


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Talking-Gig「子ども中心」の社会的養護とは?


ゲスト 筒井保治さん
さまざまな事情から家庭で生活することのできない子どもたちを、支えるしくみが児童養護施設や里親といった社会的養護です。けれども、日本の社会的養護にはさまざまな課題があるといわれています。社会全体で子どもを支えるため、大人一人ひとりにどんなことができるでしょうか? 自分自身も児童養護施設での生活を経験し、当事者の子どもの権利保障、生活向上のために活動を続ける筒井保治さんにお話を聞きます。


2017年5月13日(土) 18:00 – 21:00
バリアフリー社会人サークルColors
(東京都大田区東京都大田区東矢口3-3-1 Transit yard 1階)
参加費…フリードリンクお菓子アルコールあり1500円


参加を希望される方は、よろしければ下記のフェイスブックページから参加ボタンを押してください。
https://www.facebook.com/events/1919365674959350/

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プロフィール

野口和恵

フリー編集者・ライター。児童書編集にたずさわるかたわら、国内外の子どもを取り巻く問題について取材。

著書に「日本とフィリピンを生きる子どもたちージャパニーズ・フィリピノ・チルドレン」(あけび書房)がある。


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