「子ども中心」の社会的養護とは?-②
映画「隣る人」から思う


隣る人」は児童養護施設「光の子どもの家」を8年間にわたり撮影したドキュメンタリー映画です。2012年の公開以降、各地で自主上映が続けられています。タイトルの「隣る人」は、この施設の理事長がつくった造語で、「いつも隣りにいつづける人」といった意味がこめられています。


「光の子どもの家」は、1985年に可能な限り通常の建物でふつうの暮らしを子どもたちに提供する、「子どものための子どもの」施設をめざしてつくられました。「〇〇家」と名前のついた民家5軒が設けられ、そこで子どもたちが保育士と生活しています。こうした形態は日本の児童養護施設としては、めずらしいといいます。


また、これも日本の施設のなかではあまり例がないそうですが、職員は交替制ではなく責任担当制というかたちをとっており、住み込みで担当の子どもと寝食をともにしています。「私のママだよ」と子どもたちが保育士をとりあったり、実母の面会に戸惑ったり、子どもたちの多感な表情をカメラは静かに映しています。


児童養護施設を記録した映像をテレビで見たことは何度かありますが、この映画のように子どもたちの顔を映したものは見た記憶がありません。プライバシー保護の観点から映さない、または撮影してもモザイクを入れたり音声を変えたりすることが、報道の場合は当たり前になっているのではないかと思います。私自身も取材をする立場として、その考えはよく理解できるものです。


それがなぜこの映画では子どもの素顔を出せたのか。意外にもそのきっかけとなったのは、そこで暮らす子どもたちの言葉だったといいます。以前、光の子どもの家ではニュース番組の取材を受けたとき、やはりプライバシーを守るために徹底的な規制をかけました。けれども自分の顔にぼかしの入った映像を見た子どもたちは、理事長に強く抗議をしたといいます。


「私たちは何かわるいことをしたの? 甲子園に出る高校球児たちはだれもボカシが入ったりしないのに」。
それが彼女たちの思いでした。


実際に子どもたちのなかには、カメラに映ること嫌がる子もいるでしょう。さまざまな事情もありますし、一定の配慮は必要だと思います。
けれども「社会から隠されることなく一人の人間として堂々と生きていきたい」という思いも、また子どもたちのなかにあることを、このエピソードは教えてくれるようです。


光の子どもの家は、行事を通して地域の人々と交流し、育児相談にのったり、家出少年の駆け込み寺にもなったりと、地域社会のなかでなくてはならない存在になっています。
しかし、立ち上げる前は、住民から「児童養護施設ができると、地域の学校の教育環境が破壊される」といわれ、反対運動が起こりました。「札付きのワルが来る」という噂も流れ、地域の理解を得るために大変な苦労をされたそうです。


社会のなかでなくてはならない場所なのに、近くにあるのはなんだか面倒だと思われ、誤解され、排除されてしまう。これはなぜでしょうか。


児童養護施設や里親など、家庭で暮らせない子どもを支える制度を「社会的養護」とよびます。社会で子どもを支えていこうという意味がこめられています。


「けれども実際にはまだまだ社会的に知られていないし、児童養護施設というと『暗い』、『かわいそう』というイメージが強いんです」と話すのは、中学生時代に児童養護施設での生活を経験した筒井保治さんです。


現在、筒井さんはお仕事のかたわらIFCAという団体に関わり、社会的養護を明るいものにするために活動されています。アメリカの青年たちとも交流をし、日米の社会的養護が良いものになるように、尽力しています。


5月13日に、筒井さんをゲストにお招きして、「『子ども中心』の社会的養護とは?」をテーマにお話しを聞くイベントを予定しています。ぜひ多くの方にお越しいただければと思います。

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Talking-Gig「子ども中心」の社会的養護とは?


ゲスト 筒井保治さん
さまざまな事情から家庭で生活することのできない子どもたちを、支えるしくみが児童養護施設や里親といった社会的養護です。けれども、日本の社会的養護にはさまざまな課題があるといわれています。社会全体で子どもを支えるため、大人一人ひとりにどんなことができるでしょうか? 自分自身も児童養護施設での生活を経験し、当事者の子どもの権利保障、生活向上のために活動を続ける筒井保治さんにお話を聞きます。


2017年5月13日(土) 18:00 – 21:00
バリアフリー社会人サークルColors
(東京都大田区東京都大田区東矢口3-3-1 Transit yard 1階)
参加費…フリードリンクお菓子アルコールあり1500円


参加を希望される方は、よろしければ下記のフェイスブックページから参加ボタンを押してください。
https://www.facebook.com/events/1919365674959350/

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プロフィール

野口和恵

フリー編集者・ライター。児童書編集にたずさわるかたわら、国内外の子どもを取り巻く問題について取材。

著書に「日本とフィリピンを生きる子どもたちージャパニーズ・フィリピノ・チルドレン」(あけび書房)がある。


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